最遊記歌劇伝と座長(仮)が最高だった話

最遊記歌劇伝Oasisを観劇した。13公演中6公演を観劇することができた。最遊記歌劇伝の感想と座長(仮)について書き残しておきたいと思いブログを書くことにした。

最遊記歌劇伝を世界中の人に見てほしい。

 

最遊記歌劇伝は漫画「最遊記」のミュージカルであり、初演は2008年と12年前にも関わらず、主要キャスト3人(鈴木拡樹、椎名鯛造、唐橋充)は初演から変更されていないまま、再演もなく、ゆっくり新作を上演し続けているという2.5次元舞台でも稀有な作品だと思う。

私は最遊記が大好きで、漫画は勿論、歴代アニメも全部観ている。峰倉かずや先生の漫画は全部大好き。(ワイルドアダプターを鈴木拡樹と椎名鯛造でやってくれないかなって10000000回くらい言ってる)

 

最遊記も最初のアニメも放送時は子供だったので、成長してから出会い、全部摂取した。原作がとにかく好きで、その中でも特に悟空が大好きだった。そんな大好きな悟空が主人公である今作。そして、その悟空を演じる椎名鯛造さんの大ファンである。大好きなキャラが主人の舞台を大好きな人が座長として演じる舞台が今作なのだ。

 

最遊記歌劇伝は、初演は12年前であるが、作品は8本。その中で、最遊記歌劇伝異聞を除けば、全て三蔵役の鈴木拡樹さんが座長を務めてきた。2作目以降、主催の会社が無くなり、そこから作品が自然消滅しそうになったところ、色々な人が尽力してくれたのだろう、約5年後に主要キャスト3人以外は、一新された新生最遊記歌劇伝がスタートした。その空いてしまった5年間を3人は非常に悔しく思っていると語ってくれる場面も多く、3人が最遊記歌劇伝にかける思いはとても強いことが伝わっていた。特に鈴木さんは、今は2.5次元の宝であり、2.5次元界のトップスターだが、最遊記歌劇伝は今ほど座長を務めていなかった時代からの作品であることもあるのか、とても大切に思っているように観客として感じ取ることができた。

再スタートし、God Child、翌年にはBurial、Reloadと順調に上演していたが、そのあとが3年後に三蔵一行の物語ではない異聞が上演され、三蔵一行の新作Darknessは4年後にやっと上演された。

 

人気作であることは確かだろうが、今流行している2.5次元舞台のように、次の作品がすぐに上演されるかどうかは分からない危うさが最遊記歌劇伝にはある。私は新作があるたびに、前からこんなに空いたのか、と嬉しいけれど寂しい気持ちにもなっていた。

最遊記歌劇伝は、最遊記のファン、最遊記歌劇伝のファン、制作側、そしてキャストの熱量が繋いできたシリーズだと思う。その中心である絶対的な主人公である鈴木さん、座組の支柱である唐橋さんもいない、Oasisは、続編に繋げるためにも大成功を収める必要があるのは当然で、座長の椎名さんの重圧は計り知れないものだったと思う。

 

Darkness公演決定時に、Oasisの公演も発表され、キャストが発表されるのを見ると、「拡樹くんがいない…? 鯛ちゃんが座長ってこと…?」と一回号泣した。大好きな作品の座長を大好きな人が任される。そんな経験をしたのははじめてで、絶対に成功して欲しい、という気持ちと、拡樹くんがいなくてみんな見に来てくれるのかな…?と私には不要な心配までしてしまった。それを制作側も案じたのか、Darkness上演中に、Oasisの先行チケットを来場者向けに販売していた。完全本人確認ありなので、譲渡も難しいこともあり、本当に行きたい人だけが買えるようにしてくれた制作側には感謝しかない。私の怨念もあってか、Darkness枠で桃源郷シートを4公演分ゲットし、多くの人が次の公演のチケットを買う姿を見て、みんな最遊記歌劇伝が大好きなんだなぁと勝手に安心した。

 

なんとかチケットもゲットでき、徐々に公演が近づいてくると、椎名さんのツイートやFC限定ブログから、プレッシャーを感じてることが伝わった。椎名さんはとてもストイックな方だが、色々な経験もあるので過剰に緊張するタイプではないと思うのに、今回はやはり座長であり、最遊記歌劇伝の主人公を演じるからこその気合もあったのかもしれない。

イベントで「鯛ちゃんが座長になるんですか?うれしい!」といったことをご本人に言うと、最遊記歌劇伝ってついてる限り、俺にとって座長は拡樹だけだから」と言っていて、最遊記歌劇伝や座長に対する敬意がものすごくあって、結局最後まで、「俺は(仮)だから」というほど、そのポジションが大切であることを理解している椎名さんのプレッシャーはすごいものだったと思う。

 

FCブログや有料配信で語っていたことをどこまで言っていいのか難しいのだが、少しのネガティブな発言も、ツイッターという、関係者、ファンなどの多くの人の目に触れる場所でしたくないと、FCブログで少しだけ語ってくれていた。その内容も全くネガティブではなく、ただただストイックなだけなのだが、やはりプロ意識が高く、自分のファン以外に、不要な心配をかけたくなかったのだろう。

 

ここでファンに向けてだけ、内心を吐露してくたのは正直めちゃくちゃ嬉しかった。普段弱音も愚痴も全く言わない人なので、我々ファンを信頼してくれる・・・!と不謹慎ながら感動してしまった。気になる人は是非、ニコニコ生放送の椎名鯛造の「エビで鯛は釣れねぇ!」のブログを見て欲しい。有料だけど、ブログの内容や写真が最高なのは勿論、月一回の生配信は素の椎名さんを見ることが出来てめちゃくちゃ良い。そして公演期間中の話を物凄く沢山してくれて満足度が高い。あと3回に1回くらい唐橋さんがいる(体感)。二人の会話は兄弟みたいでめちゃくちゃ可愛い。

 

そんな推しの言葉を浴びて観劇する、最遊記歌劇伝Oasis初日の私のメンタルは崩壊寸前だった。最遊記歌劇伝の新作を見れること、大好きなオアシス編が見れること、大好きな藤原祐規さんが帰ってきたこと、嬉しいことは山ほどあるが、椎名さんの座長姿を見るのは、2度目だった。2015年「龍狼伝」ぶりだった。2019年の「傷だらけのカバディ」のほぼ主人公だったが、座長ではなかったので、座長といえば、「龍狼伝」ぶりだと思う(多分)。私は最遊記歌劇伝God childで椎名さんを好きになったので、まさか好きな人が大好きな作品の座長を務めるなんて思ってもみなかった。約5年ぶりの座長公演を見る前から泣きそうだった。

 

グッズの長蛇の列に並び、たらふくランダムブロマイドを買い、座席についた。桃源郷シート(プレミアムシート)だったので、この距離で見るのか…と頭を抱えた。久しぶりに聞く、3人のナレーションが流れ、開幕する。

暗転し、暗闇にぼんやりと光のように黄色が浮かび、それを見た瞬間、悟空だと思って涙が出た。そして悟空の歌から始まる。

この歌がまためちゃくちゃいい。三蔵不在にこのタイミングで「伸びた影四つ でこぼこだけど それが好きなんだ」と四という数字を出すところが凄い。いない三蔵の存在を際立たせていて凄すぎると思った。

 

椎名さんは歌が苦手だと公言しているが、贔屓目を差し引いても、普通に上手いと思う。歌を武器とする役者さんと比較すれば見劣りはするのかもしれないが、一役者としては十分だと思うのに、椎名さんはストイックであり、演技や殺陣は抜群に上手いので、歌がそのレベルに到達できていないと強く感じてしまうのかなぁと勝手に思っていたりする。

 

歌が苦手だと言う椎名さんは、歌って踊るような役はやらない、と常々言っている。そんな人が歌劇伝、ミュージカルの座長を務めることになるのは、とても運命的なものを感じるし、天啓であるような気にすらなる。本当の表現者というのは、自分が望む望まざるに関わらず、その場を与えられてしまうんだろうと考えてしまう。だからこそ、今このタイミングで椎名さんが最遊記歌劇伝の座長を任されたんだと思いたくなる。

 

そんな歌劇伝の歌を支えてくれたのは、前作に引き続き、ヘイゼル役の法月康平さん。何度聞いても飽きることなく、鳥肌が立つほど美しい声で、見る人全員の心を奪う。最遊記にはカミサマがいるが、カミサマは神にはなれない人間であることが美しかったが、法月さんのヘイゼルは劇中で言われる通り、天使のような歌声だ。あの歌に心を揺さぶられない観客なんて存在しないと思う。歌うために生まれてきた生き物でとても美しい。

 

前作ラストを今作でそのままやるというのが面白く、三蔵不在を改めて実感させられる。三蔵役の方が物凄く研究されたのか、どうみても鈴木さんにしか見えず、前方席でも顔は絶妙に見えずに、背格好も仕草も鈴木拡樹の三蔵だった。結局誰が演じていたのか公演後も一切発言されなかったが、彼に物凄く称賛を贈りたい。めっちゃ三蔵。

 

八戒藤原祐規さんが、いつか妖怪状態で悟空と戦いたいと言っていたのに、前作では出られなかったので、もう藤原さんの妖怪状態を見ることはないと思っていたのに、前作でやった八戒VS悟空を前作以上にがっつりやるところに、制作陣の愛を感じた。前作で八戒役をしたさいねいさんの八戒も素晴らしかった。

その上で、藤原さんの八戒でこのシーンを見ることが出来るのはやはり嬉しい。個人的にはReloadより、声優の石田彰さんっぽさを引いて、藤原さんの八戒っぽくなっている気がして、またそれも素敵!とニコニコした。

 

八戒VS悟空は、椎名さんがいとも簡単に浮かび上がり飛び回り、斉天大聖そのものになっている。峰倉かずや先生のブログでも書かれていたが、椎名さんの悟空は原作悟空よりもさらに身軽な印象を受ける。原作悟空の方が一発は重そうで、舞台悟空の方が高く飛べるイメージ。2次元よりも身軽って椎名さんどこの次元の人かな???となるが、どんな役を与えられても、どんな作品に呼ばれても、一人だけ必ずと言っていいほど、アクロバットをする椎名さん以外に、ここまで身軽な悟空を演じられる人はいないだろう。足裏にバネつけてるのかな???って思うほど飛ぶ。すごい飛ぶ。側転・ロンダードバク宙・バク転なんでも呼吸をするように出来る。無重力すぎてほぼ鳥。

 

前作では悟空のために何も出来ず立ち尽くす三蔵側の目線だったのか、今回は三蔵がいないことで、より悟浄の目線でみることができ、そこから悟浄が「ただ生きてる強いから」と悟空の歌を歌うのは物凄くグッときた。あの場でなにも出来なかった三蔵と、戦うことはできなかったけど二人を抱えて生きる悟浄の対比が美しい。本当に鮎川太陽さんの悟浄はかっこいい。

 

「Go to the West」で悟空が真ん中で歌っているのはもう本当に心が震えた。座長なんだと思ってまた泣きそうになってしまう。そこから、三蔵一行の歌で、三蔵パートをまるっとなくして、他三人のパートのみ歌うのも素敵だった。三蔵の代わりは必要ないし、不可能だから、今回は本当に三人だけで進む感じが出ていて、最高だった。

そのあとの「あなたに伝えたい」という美しいフレーズを悟空が歌い、大号泣してしまった。このフレーズは光明が三蔵に向けて歌うイメージが強く、ヘイゼルがフィルバート司教に向けて歌う印象も強かった。大切な人を慈しむような光明と、大切な人を敬愛し続けるヘイゼル。そして、悟空は、大切な人への決意を叫ぶようで、誰とも違う歌になっていて、悟空と椎名鯛造の強さと決意を感じた。いない三蔵への叫びのようにで本当に胸が締め付けられる。

 

次は、椎名鯛造の美しい背中の筋肉を眺めるターンになり、情緒が迷子になった。泣きながら必死で上半身裸の背中をガン見するオタクになった。この背中評判が良かったようで、椎名さんも褒められて喜んでいて、こちらこそありがとうございます!!!!!という気持ちだった。椎名さんは筋トレをしないとよく言っているのだが、今回もやはりあまり筋トレをしなかったようで、プロテインと日々の稽古のみであの美しい肉体を作り上げたと言っていた。戦闘民族か何かなのかな??????

椎名さんは「逆立ちの方が楽」「なんでみんな逆立ちしないの?」「(子供の頃)バク転やろうとしたらできた」というナチュラルボーンアクロバット人間なので、ちょっと我々の世界の道理とは違うのかもしれない。

 

そして、今回の最高の見どころの一つである「ヘイゼルマニュアル」。某大ヒットラブソングを彷彿とさせる曲調と歌詞を法月さんが世界を震わせる美声で歌い上げるものだから、聞いたことがない異次元のラブソングになって凄い。そしてめちゃくちゃ可愛い。前作以上に歌うの大好きキャラになってるヘイゼルは、最遊記歌劇伝のアイドル。二番まで聞きたい!!!!と毎回思うから、フルバージョンの音源をどうにかして売って欲しい。

 

砂漠での日替わりネタも今回の見所の一つ。日替わりネタの覚書。

 

最遊記歌劇伝 日替りネタ 2/2

八戒「どっちが黒猫とブラシの似合う魔女か対決をするし」

悟空・悟浄「あの人のママに会うために〜」(如意棒・錫杖に跨ってジャンプ)」

 

最遊記歌劇伝 日替りネタ 2/3 ソワレ】

八戒「どっちが黒猫とブラシの似合う魔女か対決するし」

悟空・悟浄「カーテンを開いて〜(如意棒・錫杖に跨ってジャンプ)」

 

最遊記歌劇伝 日替りネタ 2/4 ソワレ】

八戒「どっちがとなりのふふふ(トロ)ができるか対決するし」

悟空「(足を開いて両手をバチンと叩く)捕まえた!!!!捕まえた!!!)」

悟浄「(いーっ😬という顔をして仁王立ち)(大トロ?)」

 

最遊記歌劇伝 日替りネタ 2/5 ソワレ】

八戒「どっちが紅孩児に似てるか対決するし」

悟空「幸せを得ることは誰か傷つくこと〜

悟浄(低姿勢で両手を下げる)」

八戒「ちょっと待ってくださいちょっと待って。悟浄のはなんなんですか」

悟浄「決まってるだろ炎獄鬼」

八戒

 

最遊記歌劇伝 日替りネタ 2/6 ソワレ】

八戒「どっちが紅孩児僕の悪口を多く消えるか対決をするし」

悟空「あのタスキなんなんだろ」

悟浄「誕生日かよ」

悟空「八戒緑好きすぎじゃない?」

悟浄「だよな」

悟空「あとイライラしてる時運転荒い!」

八戒誕生日は9/21です」

 

日替わりネタは椎名さんが案を出したらしく、事前に稽古場や演出家さんに相談した上で、毎日やっていたよう。その場の思いつきのアドリブを良しとしない椎名さんは、日替わりネタも常にある程度練られたものじゃないと出さないところが最高にかっこいい。プロ意識の高さ。千秋楽は、「紅孩児の真似をする」で、悟浄が「はぐれた雲が〜♫」と歌い、悟空が初演の頃の紅孩児の歌を歌い、八戒が「それは10年前のです!」とツッコミが入るネタで、会場中が拍手で素敵な時間だった。

 

悟空がスカウトされるシーンでは、恒例の唐橋さんがいないので、うじすけさん、法月さん、成松さんが妖怪に扮して歌い踊る楽しいものに。藤原さんのツッコミがめちゃくちゃ美しくて良い。

ここでお三方が歌う「恋のひなべっこ」という曲がめちゃくちゃいい。この楽しいだけのはずの曲がここだけで終わらないところが最遊記歌劇伝の凄いところだと後に分かることになる…。

 

この後の悟浄のソロ曲がめちゃくちゃ良い!爽やかなアイドルのような楽曲を高らかに歌い上げる鮎川さん。私が偉そうに言える立場ではないことは重々分かった上で、鮎川さんめちゃくちゃめちゃくちゃ歌が上手くなってる…!!!多分誰の目から見てもうまくなってるレベルでうまい…!!!元々声が太くて通るものだったから、素晴らしい声量と力強い高音がとても聴き心地が良く、何度聴いても聞き惚れてしまう。最遊記歌劇伝の三蔵一行が、物語の外でも成長しているようで、本当に素敵だった。

 

人間と妖怪が対峙して歌うシーンの迫力が凄くて、それぞれの正義の為に対立する様子が、歌劇伝だからこそ、アンサンブルさん達の熱量に圧倒される。

お兄ちゃん役の和久井さんのブログで書かれていた「“この話は、名前がついてない人たちがそこで死に物狂いに生きてるお話”という言葉をいただきました」という言葉がとてもグッときた。「少女」も名前がなく、お兄ちゃんも名前がない。その他大勢とは言えない、情報屋、肉屋、と妖怪それぞれにも人生があった。

でも誰一人も名前がなく、そんな名もなき人たちの生き様が描かれた物語が、最遊記歌劇伝oasisだと思った。原作も読んでいて、何度も観劇しても、この結末を変える手段はないのかなと真剣に考えてしまうほど、人間と妖怪の争いは切なく、虚しく、でも回避できないもので、それを傍観するしかない無力な三人、そして最遊記歌劇伝では常に誰かに生きる強さを歌っていた悟空が、生かせなかった大切な人でもあるから、悲しいほど美しくもあった。

 

和久井さんのブログがとても素敵なので是非。

和久井大城「最遊記歌劇伝Oasis、無事すぎて困るほどに終幕。」 https://ameblo.jp/wakusand5698/entry-12574190470.html

 

徐々に不穏な空気が流れる人間と妖怪のぴりついた空気と対照的に、悟空と少女が二人きりでじゃがいもを剥くシーンがとても可愛らしい。じゃがいもの剥き方がわからない悟空が、毎回少しだけ違うことをしてじゃがいもを剥くのが見どころの一つなのだが、ラストは生のじゃがいもにかぶりつくという暴挙にでて、会場の笑いを誘った。

そのあとの、妖怪のためにジープで水を汲みにいった八戒が、Burialの曲を歌うのが天才すぎた。Burialと藤原八戒の親和性がえげつないので、歌うたびにより切なく、美しい曲になるので、藤原さんはすごい。それを歌わせる演出家の三浦さんすごい。

 

心が通い合った直後に、戦争に備えた妖怪達の武器を見て、少女との距離を測りかねて葛藤する悟空と、迷いのない少女のデュエットは鳥肌が立った。凛とした少女の歌声と、力強い悟空の歌声は切ないほどに胸に刺さるものだった。「生きろって言ってくれる誰かがいる みんな同じ」という歌詞を悟空が歌うのは天才すぎて号泣した。

三蔵に生きる意味を与えられた悟空は、三蔵とともに人間の世界を守ることに疑問を感じることなく、一緒に旅を続けてたのに、今回三蔵と離れて、自分にとっての三蔵のような存在が、倒すべき妖怪一人一人にいることをはじめて知る。その切なさを歌い上げる椎名さんは凄まじかった。椎名さんの武器はアクロバットだけでなく、観客全員の心を締め付けるような叫び声もだ。

舞台「K」では和泉宗兵さんが「鯛造の叫び声は本当に切なくなる」と言っていて、首がもげるど頷いた。椎名さんの叫び声は、赤ん坊の泣き声や、動物の子供の親を探すときの鳴き声のように、絶対に耳を塞ぐことができないような、切なさや悲しみが詰まっていて、何度聞いても胸が痛くなる。それを一番多く聴けるのが最遊記歌劇伝でもあるから、私はこの舞台に吐くほど心を揺さぶられてしまうのかもしれない。好きな人の叫び声を聞くのが一番記憶に残る・・・。悲しい気持ちになればなるほど、椎名さんのすごさを実感する…。

 

少女の兄が人間達の罠によって無残に殺され、それを見て戦争をしようと攻撃をしかける妖怪を分かった上で、妖怪の村を攻めてくる人間に、激高する少女を止めようと叫ぶ悟空に、「あんたどっちの味方なんだよ!」と叫ぶ少女の二人の感情がぶつかり合って一瞬で鎮火するあの瞬間は、本当に鳥肌が立って涙が止まらなかった。二人の役者が全力でぶつかり合って生まれるエネルギーに圧倒された。

そんな二人の後ろで戦火が広がる様子は切なく、胸が痛くなる。そして、人間と妖怪による歌がぶつかりあう。その緊迫した瞬間に、突然響くヘイゼルの歌声は、天使が降臨した鐘の音のようで、また鳥肌が立って号泣してしまった。ヘイゼルの歌はたった一人で世界の全てをひっくり返してしまうようなパワーがあるので、この均衡状態でこの歌声が流れるのはいきなり頭を横から殴られるような衝撃があった。ヘイゼルすごい。法月さん天才。

 

全員で歌い、踊る「Invisible War」。人間も妖怪も必死に戦い合う中、ヘイゼルも選択を迫られる。「咲かせ 心の花を」と歌い上げるヘイゼルの隣に立つ悟空が、それに被せるように「生きろ ただ強く」と歌い上げるのを聞いたときは全身が震えた。

最遊記歌劇伝の歌姫である法月さんと、歌が苦手だと言っていた椎名さんが肩を並べて、対等に歌っている姿が、ヘイゼルと悟空そのもので、心が震えた。椎名さんの持ち味の切なくなるような叫び声が歌にも乗っかっていて、高らかに響くヘイゼルの歌声と、必死に切実に叫ぶような悟空の歌声の対比はあまりにも美しかった。

誰の心をも震わせる歌を歌う椎名さんの姿を見た。こんなに幸せなことはない。あの美しい光景は何度見ても泣いてしまった。思い出しても泣きそうになる。もう一度見たいし、世界中の人に見てほしい。

ソロパートを力強く歌いあげ、全員が立つ真ん中で、堂々と踊り、歌う椎名さんは紛れもなく座長だった。誰よりも小さな体がとても大きく見えて、悟空であり、座長椎名鯛造だった。あの光景も本当に幸せだった。

 

「人間だとか妖怪だとかそんな関係ねぇんだ」と立つ悟空はとてつもなく強くかっこいい主人公だった。オアシス編は悟空の成長物語であることを改めて実感させられる。

そこから、避難させた子供たちの悟空が語り掛けるシーン。暗転し、ぼんやりとした光が悟空だけを照らし、表情もあまり見えないまま、「みんな、泣くな」「生きていい。生きてていいんだ」と語る悟空は、観客に優しく丁寧に語り掛けていて、三蔵に救われた悟空だらこそ言える言葉で、胸が締め付けられた。

 

馬車に乗って戦地に行く少女を止めるシーン、ここの悟空の叫び声もやはり切なくて苦しくなるもので、それと並ぶほど少女の叫びを切実で、それがぶつかり合い、悟空が泣きながら「いやだ! わかりたくねぇ!」と叫ぶ姿は涙なしには見られなかった。このシーンでは高頻度で椎名さんは泣いていて、泣きながら地面をたたく姿はただただ悟空だった。

 

悟空の初恋が終わったこの切ない瞬間に、入ってくる歌が、ヘイゼルの「恋のひなべっこ」の別バージョンの別曲「over」なのがすごすぎる。コミカルな楽曲をラストの一番切ないシーンで使う演出の凄さ。三浦さんさすがすぎて天才。

「俺が行きたいから行くんだ!」というセリフはものすごく力強く、悟空の決意と、椎名さんの決意が含まれているようで、心が震えた。なんて悟空はかっこいいんだろう。なんて椎名さんはかっこいいんだろう。それに震えながら涙を流した、

 

椎名さんの「本日はご来場いただき、誠にありがとうございます!」は何度聞いてもかっこよくてうれしくて、何度聞いても幸せな気持ちになった。そんなかっこいい挨拶からのエンディングに入った瞬間、かっこいい椎名鯛造ではなく、かわいいかわいい悟空に早変わりするのが凄すぎた。三浦さんから「ここからはショーだから」と言われたらしく、元気に踊り、飛び跳ねるマスコットキャラクターの悟空になる椎名さんの演技力と表現力には驚かされた。

 

私が行った公演では初めて、千秋楽の時だけ、エンディング最初の悟空のパートで手拍子が起こった。これが誰からともなく沸き上がり、ステージの楽しそうな悟空に引っ張られて自然に起こった手拍子で、会場中が悟空の虜になり、また椎名さんへの称賛でもあったのかもしれないと思えて、幸せな光景だった。そのあとのヘイゼルの歌は耳を澄ませてじっと聞くべき曲なので、自然と手拍子がやんだので、本当に悟空と椎名鯛造に贈られた手拍子だった。椎名さんは最遊記歌劇伝ファンに座長として認められたように思えて、またまたまた泣けてしまった。

 

青い照明で作られた美しい湖で歌うヘイゼルの伸びやかな歌声が響く中、後ろで飛び跳ねる悟空がめちゃくちゃにかわいい。ヘイゼルの歌は何度聞いても最高。

八戒「過去も未来も生きる僕らは」のあとの「生きるだけ」を悟空が歌うのもはじめてで(多分)、ぐっときた。三蔵や光明が歌うイメージが強かった重要なパートを、悟空が歌っているのを見るのは成長であり、責任であるので最高だった。

 

妖怪と人間たちが楽しく歌って踊っているのも、それだけで泣きそうになるほど幸せで、切なかった。そして大切なフレーズである「あなたに伝えたい」とオープニングは悟空で、エンディングはヘイゼルなのがまた美しくて最高だった。

歴代の最遊記歌劇伝の歌が上手いゲストは適役だったので、敵ではないヘイゼルが、さった一人でソロパートを歌いあげているのは、適役が歌っているのは別の美しさがあった素晴らしかった。何度でも聞きたい最高の歌声。

そしての戦争の跡地残された棒に、一度去った悟空が、少女の兄からもらった帽子を置いて去っていくラストシーンは美しすぎた。勝利の旗のように見えるその帽子が、妖怪たちの生きた証として、掲げられているのは素晴らしいラストだと思う。

 

千秋楽の座長椎名鯛造さんの挨拶が素敵だったので、見てほしい。

 

千秋楽 挨拶

スタンディングオベーションありがとうございます。本日は千秋楽ということで、キャストを代表して、僕が挨拶させていただきます。

oasis編はdarknessと同じタイミングで発表されて、鈴木拡樹、三蔵がいない作品になる、キャストもファンの皆さんも不安だったでしょうが、何よりも僕が一番不安でした。いつも隣にいてくれる存在が、いなくて…

でも、無事に怪我なく終わることができてホッとしています。それ以上僕から語ることはありません。

ひとつだけ皆さんに言えるのは、生のジャガイモは食べちゃダメだってことです。(劇中で)食べてからずっと歯に挟まってる感じがする。

最遊記歌劇伝何作品もやらせていただいたんですが、この作品が、このキャスト、スタッフでできる最高の、今までの最遊記歌劇伝の中でも、僕は最高の作品になったと思ってます。なので、必ずこれを上回る作品を作れるように、三蔵、鈴木拡樹を呼び戻して、西への旅を再スタートできるようにしたいと思っているので、皆さん応援よろしくお願いします!

 

挨拶 2回目

もう喋ること考えてません!なので、皆さん気をつけて帰ってください。

本当に皆さんありがとうございました。

今回は本当に余裕がなくて、みんなに怖い人って思われたと思うけど、本当に余裕がなくて…。本当に余裕がなかった。でも今日は本当に楽しむことができました!

本日はご来場いただき、誠にありがとうございました!

 

「いつも隣にいる存在が」で言葉に詰まって、泣きそうに思えたのに、そこで涙を見せることなく、じゃがいもの話で笑いを取り、最後はみんな笑顔で終わらせるのが椎名さんらしくて、最高にかっこいい座長だった。ご本人も泣かずに笑って終わらせようと、その話をしたと言っていたので、本当に最後までプロ意識が高く、完璧な仕事をするのが椎名鯛造なんだと実感した。

 

ものすごく長くなってしまったが、とにかく最遊記歌劇伝は最高!!!!!!!!!!!ということが伝わればうれしい。そして、椎名鯛造さんがめちゃくちゃめちゃくちゃかっこよくて最高の役者であることも伝わればうれしい。

 

最遊記歌劇伝も続編があったとしても、原作も中断しているので、あと1作で本編は一区切りつくと思う。その先、または最遊記外伝があるかは、ファンの応援にかかっていると思うので、全力で応援をしたい。外伝はぜっっっっったいに、この四人でやってほしい!!!!!!!!!

椎名さんが何歳下の子演じるの?????となるけど、椎名さんのプロショタ具合なら、外伝のかわいい悟空だって演じることができるし、鮎川さんの捲簾は超絶かっこいいことがわかりきってるし、藤原さんの天蓬は死ぬほど性癖なので見たくて狂いそうだし、鈴木さんの金蝉は全世界の人が喜ぶので絶対にやるべき。

 

そして、欲を言えば、また椎名鯛造さんが座長をする姿を観たい。世界一好きな俳優が舞台の真ん中に立って、カーテンコールで挨拶をするのを見るほど幸せなことはない。でも、きっと私が強く望まなくても、それは起こりうるんだろうなと思う。椎名鯛造という人はたとえ望まなくても舞台の上に呼ばれてしまう、どこの世界でも誰よりも主人公の役者さんだと思っているので安心して、またいつかを待つことができる。