「自担が取ってきたシングル」という美しい言葉

NEWS担はよく「○○が取ってきた仕事」という表現を使う。「手越祐也がとってきたBLUE」「加藤シゲアキが取ってきたトップガン」など、ファンが一番うれしいのは「○○が取ってきたシングル」だ。

 

NEWSはどのグループにいるようなジャニーズのセンター、エースというポジションがいないので、ドラマタイアップ曲というのがかなり少ない。そして、面白いのが、ドラマタイアップ曲があっても、シングルカットされないことがあるのだ。

 

ジャニーズはテレビを中心に活動するので、どうしてもドラマのタイアップ曲は、大々的に宣伝され、多くのグループの人気曲になる。NEWSはその主演ドラマというものと、残念ながら、なかなか縁がなかったので、四人になっては、クラブワールドカップの応援ソング(日テレ)をシングルカットして、なんとか宣伝しようとタイアップにしてくれているイメージがあった。テレビ局のワールドカップの楽曲をシングルにして歌うジャニーズってすごくない????サッカーの妖精か、NEWSくらいでは????

その楽曲もすべてめちゃくちゃに素晴らしい名曲ばかりなのだが、それも毎回シングルカットされるわけでもない。結構人気曲でもシングルカットはされなかったりする。

 

女性の下着のCMのタイアップ曲に二度も起用されたときは、NEWSを推そうとしてくれたまだ権力のない中間管理職クラスの人が必死で取ってきたタイアップだ!!!!!なんて感動をした。しかも、そのタイアップは二回ともシングルカットはされていない。女性用下着のCMなので、勿論、CMに本人たちは出演していない。夏に相応しい肌ざわりが売りのブラジャーを紹介するナレーションのバッグに流れる爽やかな夏を思わせる男性アイドルの歌声。この世界でNEWSにしか作れない夏の風物詩ですよ。夏曲と夏のブラジャー。風情がすごい。(※ただしシングルカットはされない)

それでも、いじらしいファンたち(自画自賛)は、テレビや下着売り場で流れる、「渚のお姉サマー」や「シリウス」を聴いて喜ぶのだ(※ただしシングルカットはされない)

 

NEWSのことも、ファンのことも、悲観しているわけではないので注意してほしい。自虐なんてダサいことをしたいわけでもないことも主張したい。シングルになって、CDを買えて、音楽番組で歌ってくれたら、それは一番幸せだけど、NEWSを推そうと誰かが必死で画策した結果がシングルカットなしタイアップ曲というのが、めちゃくちゃ多くて、その愛情が愛しかった。そして、それについて、ラジオで「あの曲まだ完成してないんだよね」と本人たちから聞くのも、その随分先に発売されるアルバムでやっと一曲フルで聴けることも、全部まるっとNEWSらしくて幸せなのだ。

 

そうなってくると、シングルカットされないことになれていく。タイアップ曲の横に(発売未定)と書かれているのを何度もみて、「また(発売未定)だよ~~~~」と嘆くのはNEWSファンのお家芸なので本当に日常だった。

 

それが、ここ数年、加藤シゲアキのめざましい活躍によって、ポンポンポンとドラマ主題歌、挿入歌のシングルカットが続いて、「おや……?」と穴から外を伺う小動物のように、期待したらシングルカットされるかも……?という風潮になっていた。

 

幸せを期待できる環境の中でも、私はどうしても、すぐに期待ができなかった。

古参なんて言葉は嫌いだし、自慢げに過去を持ち出すのも嫌いなんだけど、トラウマなので聞いて欲しい。

私は加藤シゲアキ初主演ドラマ「トラブルマン」の主題歌「BE FUNKY!」がだいっっっっっっっっっすきだった。当時のNEWSのシングル曲と比較すると、多分二番目に好きだった。ちなみに一番は「さくらガール」。当時のNEWSメンバーの主演ドラマはどうしてもNEWSの、という雰囲気ではなかった。主演映画の主題歌が一度だけあったが、その時はMステ何回出た…?ってくらい出たような気がする。あれは嬉しかった。

ドラマ主題歌では初の「BE FUNKY!」。ドラマ自体もSABU監督作品で、めちゃくちゃ面白くて、加藤さんの初主演連続ドラマで、主題歌もNEWSということもあって、本当に嬉しかった。

 

でも、ドラマのエンドロールで流れる「BE FUNKY!(発売未定)」の文字。(発売未定)を見たのは、あれが生まれてはじめてだった。だって、ジャニーズで、深夜枠とはいえ、初の連ドラ主演で、完全にシングル用のかっこいい楽曲で、作詞は当時飛ぶ鳥を落とす勢いのzopp氏。ジャニーズのタイアップシングルのありふれたパターンだと思う。

それでも、(発売未定)なのだ。当時まだ子供だった私はどうしても納得がいかなかった。同じ年代のエース級じゃないジャニーズの連ドラ主題歌で、他に(発売未定)のものはあったのだろうか。私はNEWS以外のジャニーズにそこまで詳しくないから、もしかしたらいたのかもしれない。いたとしたら、同じ悔しさを味わったと思う。

悔しかった。未だに思い出すと、涙が出るほど悔しかった。子供のとき、それを理不尽だと思ってしまった。

加藤さんも、「BE FUNKY!」が大好きだった。思い入れがある、と言っていた。同じ気持ちだなぁと勝手に思った。だからこそ、加藤成亮主演ドラマのシングルを買いたかった。

でも、結果シングルにはならず、主題歌を音楽番組で歌うこともなく(確か)、四人のNEWSになった時のファン楽曲投票ベストアルバムにも入らなかったのだ。私はめちゃくちゃ投票した。だって、シングル(カットされたかったけど)曲で、「さくらガール」と同じくらい好きな曲だったのだ。

(発売未定)をはじめて見た、あの時に感じた、NEWSに関わる何かに対する絶望と、「普通」を期待するのことの諦めは、未だにきっと小さく私の中にあるのだ。

 

 

2019年6月1日、増田貴久の連続ドラマ「ボイス 110緊急指定室」の出演が発表された。増田さんの連続ドラマレギュラー出演は、2012年「レジデント~5人の研修医」以来だ。7年ぶりの連続ドラマというだけで、物凄く嬉しい。単純に物凄く嬉しい。

 

NEWSの演技班は、いまや加藤シゲアキが全てを担っており、「ゼロ~一攫千金ゲーム」は主題歌「生きろ!」だけではなく、メンバー全員が出演までして、NEWSの加藤シゲアキが取ってきたシングルであり、仕事だった。

手越さんがサッカータイアップ曲を、加藤さんがドラマタイアップ曲を、とNEWSのシングル曲はこの二人が交互に取ってきたシングルと言っても過言ではないのだ。

 

そんな中でも、久しぶりの増田さんの連続ドラマ決定。私は、頭に、「増田貴久がとってきたシングル」なんて美しい言葉は浮かばなかったのだ。心のどこかにずっと「BE FUNKY!」の悔しさがあって、そんな夢のようなこと、浮かばなかったのだ。

その私の勝手な悔しさを、主演ドラマの主題歌をシングルカットするという大層な夢を、つい昨年2018年の夏、ちょうど一年前の夏に、加藤シゲアキは、「生きろ!」を掲げ、自らの手で払拭したのだ。

「傘を持たない蟻たちは」の「ヒカリノシズク」も本当に美しく、あれこそが最初の加藤シゲアキ主演作のシングル、という気もしなくもないが、全四話のドラマだったので、やっぱり宣伝されまくっていた「ゼロ」はジャニーズの主演ドラマ()っぽくて、かっこよかった。

加藤さんだからこそ、主題歌がシングルカットされた。やっと加藤さんの連ドラ主題歌はシングルカットされた、と思えて本当に嬉しかった。

 

じゃあ、増田さんは?

 

NEWSを取り巻く環境において、自分が望む形にはならない、と言い聞かせて生きてきたので、増田さんのポリシーと同じく、与えられたものを享受し、それを喜ぶ、という姿勢でファンをやってきた。スポンサーになれないのだから、批評家にもならない。あくまで、一消費者として、出された料理を丁寧に丁寧に噛みしめて食べて、幸せになるのが一番満喫できると思っていた。多くを望むとそれは叶わないし、多くを望んだつもりはなくともそれは当然ではないことが沢山あったのだ。悲劇のヒロインぶるつもりは毛頭ない。それらをわかった上で、今NEWSを応援しているので、不安も不満も一ミリもない。だからこそ、NEWSには期待も信頼も寄せているが、NEWSに与えられる仕事のタイミングと、規模、種類には、期待しないのが常なのだ。

それが一番悲しくないから。自分で勝手にあげた期待値で、自分を落胆させたくないから。

 

「増田貴久がとってきたシングル」

 

私には浮かべることも、浮かべる機会もなかったこの美しい言葉を、友人たちは言った。それが涙がでるほど嬉しくて、どうしようもなかった。同時に、NEWSの周りに期待することをやめたのではなく、NEWSの器量を私が勝手に小さく判断していたのではないか?と自分に驚いた。大好きな増田さんは、ここまでの男だと、私が勝手に決めつけていたんじゃないのか?と思った。

 

私だって、増田さんが自分の出演ドラマの主題歌のAメロを、大サビを、テレビで歌うところが見たい。メンバーが取ってきた仕事を誰よりも自慢げに語る手越さんが「増田さんが取ってきた曲」と喜ぶ姿が見たい。小山さんが一歩下がって、増田さんを恭しく紹介することろが見たい。加藤さんが「増田さんらしい」と曲やドラマを語るところを見たい。

NEWSの音楽をこよなく愛する増田さんが、NEWSの音楽に貢献することが見たい。

 

そんな大層な夢を口にしていいのか、と思う。高望みじゃないかな?連ドラ出演だけでもうれしいのに、主題歌なんて欲張りすぎかな?と本気で思ってしまうのだ。

 

でも、そうなれるのなら、それが「普通」であるのなら、私の中の「BE FUNKY!」の亡霊は、「増田貴久のとってきたシングル」の妖精になれるような気がする。って、そんなことは言えないなぁ、と思いながら夢を抱くことくらいは亡霊も許してくれると思いたい。

 

増田さん、連続ドラマ出演、おめでとうございます!